田中山田の蹴球日記

RealMadrid and Football ver 3.0

UEFAスーパーカップにみるハメスロドリゲスの使い方

レアル勝利!!

そしてスーパーカップ、ゲッツ!!

ハメスロドリゲスとトニクロースの二人がレアルマドリードの選手として初めて試合に出場しました。この二人の新加入選手についてアンチェロッティが試合後に語ったコメントが下の通りです。

クロースとハメスのデビュー
「新たな補強でチームの質が上がった。今日2選手は良いプレーをした。クロースの状態はパーフェクトで、とても良いプレーをし、とてもスピーディーで、はっきりした考えを持っていた。ハメスは前半問題があったが後半はとても良かった」

アンチェロッティ:「我々は自信を持って良いプレーをし、決勝に勝った」 | レアル・マドリードCF

アンチェロッティは言った。クロースに問題はなかった。だがハメスには問題があった。

クロースの明確な意図とポジショニングは次にやるとして、今日はハメスの前後半における問題点と、その改善方法を見て行く。

前半におけるハメスロドリゲスの問題点

まず前半のハメスロドリゲスにとって問題だったのが、左サイドのロナウドとの連携だ。

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(白のユニフォームがレアルで右に攻めている)

前半12分。ロナウドが中に入った時、ハメスは左に張り出して攻撃の幅を作らなくてはならない。だがディマリアと違って純粋なウインガーではないハメスにとって、これは望ましい展開ではなかった。その為ハメスは、どのようなポジションを取れば良いか困惑していた。

しかし、こういった状況に変化が起きる。

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前半の21分以降から(アンチェロッティの指示かあったのか、あるいはロナウドが空気を読んでくれたのか)ロナウドが明確にサイドに張り出す。

以下の画像はロナウドとハメスのポジション。

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サイド、サイド、サイド。

前半の21分以降から、サイドのロナウドと中央のハメスという具合にポジショニングが明確になった。

ハメスの動き

次は中央に位置したハメスのプレー、その意図を見ていく。

前半の23分。

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ロナウドがサイドに張る。クロースからパスが出る。

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ここでハメスがSBの裏に走り出す。

続いて前半38分。ここでもハメスは同様の動きを見せる。

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クロースからコエントランにパスが出る。その間にロナウドがサイドに出る。

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ここでハメスがSBの裏に走る。ボールを引き出す。あるいはボランチを引っ張る。

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ハメスにボランチが付いて行った。それを見たコエントランは、ロナウドにボールを預けて、ハメスが作ったスペースに走る。

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ロナウドからパスを受けるコエントラン。プレー成功。

前半まとめ

前半の早い時間帯でロナウドとハメスのポジションが整理された。そしてロナウドがサイドに開いた時、ハメスはSBの裏に走る込むプレーを何度か見せた。後半は、この動きがさらに加速する。

後半のハメスロドリゲスの動きとレアルの崩し

後半は最初からハメスの動きを使った有効なプレーが何度も見られた。

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(レアルは画像下に攻めている)

後半の立ち上がり。3分。ラモスから左サイドのロナウドにボールが出る。ハメスはSBの裏に走って、ボールを引き出すか、ボランチを引っ張る。

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ロナウドはダイレクトでハメスにボールを出した。

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(レアルは画像左に攻めている)

ロナウドからハメスへのパスはDFにカットされたが、上手くクロースがフォロー。そしてロナウドはハメスが空けたスペースに向かって爆走。

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いつも通りにベンゼマが下がって、ボールを引き出す。

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この後ターンをしたベンゼマからロナウドにパスが出て、ロナウドが二点目を決めた。

ハメスを使った崩し

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ロナウドがサイドに張る。サイドバックを引き出す。トップ下のハメスがSBの裏に走る。ボールを引き出すか、ボランチを引っ張り出す。

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空いたスペースをロナウド(コエントラン)が使う。

こういった動きは得点後も続いた。

f:id:tanakayamada3:20140816232820p:plain後半5分。右サイドのベイルから左サイドのロナウドにパスが出る。

f:id:tanakayamada3:20140816232829p:plainここでハメスが走る。

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ハメスが空けたスペースにボールを落とす。

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コエントランが走り込んでボールを受ける。

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ハメスがボールを要求。だがコエントランはロナウドにパスして、サイドに走る。

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ハメスはフロートしてボールを受けようとする。

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ロナウドがハメスにボールを当てる。そして走る。

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ハメスはワンタッチでボールをコエントランへ。

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ハメスが再びSBの裏に走る。ロナウドはハメスが空けるスペースに走り込んでボールを受ける。

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ここでコエントランは素直にハメスを使ったが、この時ロナウドは間違いなく白のスペースでコエントランからのパスを要求していただろう。

さらに一分後。

後半6分。右サイドでも同様の崩しが行われる。

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ベイルがサイドに出る。ハメスが「ボールを出せ」と要求しながら、SBの裏に走る。

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ロナウドはハメスの空けたスペースでボールを受けに動く。

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ロナウドにDFが付いて来たので、モドリッチはクロースにボールを落とす。ベンゼマロナウドの代わりにサイドに流れてボールを引き出す。

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クロースにボールが入る直前。右サイドにベイル。左サイドには流れるベンゼマ。そして中央にはハメスとロナウド

ここで左サイドを向いているクロースの選択は、

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トラップで対面のDFの逆を取って右サイド。

ベイルが裏に走る。ハメスがボールを受けに下がる。それを見るロナウドモドリッチは横にズレて(DFを引っ張る)ロナウドへのパスコースを作る。

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モドリッチが空けたコースを見逃さないクロースはロナウドにパス。

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ボールを受けたロナウドはワンタッチでボールをハメスに落とした。この後ハメスのトラップが大きくなってボールをロストしてしまったが、綺麗な流れだった。

あと、この時フォローに入ったクロースが、アロンソばりのずんどこスライディングを見せてイエローを食らっていた。色んな意味でクロースがアロンソの後釜だと確信。

後半まとめ

後半開始からの10分間だけを見ても、レアルの攻撃の意図は明確だ。トップ下のハメスの動きを使った崩しを行う。まず間違いなくハーフタイムでアンチェロッティから「ハメスの動きを使え」と明確な指示があったと思われる。

まとめ

前半の守備時442システムから攻撃時433システム、さらにサイド攻撃442という従来のディマリア仕様は上手く行かなかった。まあディマリアありきの戦術だし。

そこで前半の早い時間帯の内にポジション修正が入った。そして守備時442システムから攻撃時4231システムのハメス仕様へと変更された。

さらに後半は明確にハメス=トップ下を使ったベタな崩しが多く見られた。これにアンチェロッティは満足した。

初陣勝利!!

あれ?これならエジルで良くね?とか思ったけど、まあ初顔合わせとしては上手くいったから良かった。

ディマリアの動向や新たな選手の加入。それに伴う戦術変更や守備バランスの構築。色々と問題は起こるだろうけど、ひとまずレアルは一つ目のタイトルを獲得した。めでたし、めでたし。

あとやっぱクロース上手いな。あいつが8000万€か?

さようなら。

アンチェロッティの解説

サッカーでは裏に走る行為に関しては、主に三つの動きに分類される。

まず、ゴールに向かって縦に、あるいは斜めに走り込む動き。次に、ゴールから遠ざかる形で外に向かって斜めに走り込む動き。そしてタッチライン際をコーナーフラックに向かって縦に走り込む動き。

カルロアンチェロッティ著、片野道郎訳、アンチェロッティの戦術ノート、河出書房新社、2010年、53頁より

この試合におけるハメスロドリゲスの動きは、第二の動き(ゴールから遠ざかる動き)だと言える。