田中山田の蹴球日記

RealMadrid and Football ver 3.0

アンチェロッティが指摘するレアルマドリード最終ラインの問題

問題です

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デデン!!

このアンチェロッティのジェスチャーは一体、何を示しているでしょうか!!

正解はCMの後で

今週のレアルマドリードは、スーペルコパで、アトレティコマドリードと二度対戦しました。その時のレアル最終ラインの守備について。

まず最終ラインにおける守備の基本を確認します。

守備の局面

  • 最終ラインは高く押し上げられているか。
  • ボールがオープンな状態で最終ラインはリトリートするか、その場にとどまるか。
  • ディフェンダーは、お互いにカバーリングを取るか。
  • 最終ラインはナローに保たれているか。
  • クリアの際の押し上げは素早いか。
  • 1対1や細かいコンビネーションに弱いか。

カルロ・アンチェロッティ著、ジョルジョ・チャスキーニ著、 片野道郎訳アンチェロッティの完全戦術論』河出書房新社、2014年、53頁より。

これが基本です。

全部やると切りがないので二つだけ。

レアル最終ラインの問題

まず第一戦目の前半13分。アトレティコゴールキックです。キーパーはロングボールを蹴りました。

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白のユニフォームがレアル。レアルの自陣は左側です。画像中央上空にボールがあります。左CBのラモスが前に出てボールを弾き返そうとしています。この時SBは中に絞ってカバーをしなければならない。右SBのカルバハル(手前の黄色矢印は、中に絞ってます。走っています。その一方で左SBのマルセロ(奥の黄色矢印は、突っ立っています。

この後、不味い事が起きます。

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センターバックのラモスとペペが二人同時に競りに行ってしまった。中央でグチャグチャとなっています。またマルセロはカバーに遅れていて、カルバハルだけが一人後ろにポツンといて、もう何が何やら状態です。

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この後ペペがボールをクリアしました。しかし、それが敵にとって、ちょうど良い感じのパスになって、シュートを撃たれてしまいました。この時、失点はしませんでしたが、これは良くないです。本来なら下の図のようになっているはずだからです。

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CBの一人が競り合う。残ったCBはセカンドボールを拾えるように備える。そして両SBは中に絞ってスペースを埋める。こうですね。これが基本です。

という事で、二戦目の失点シーンです。レアルの最終ラインは、左SBがマルセロからコエントランに、右CBがペペからヴァランに代わりました。

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前半の2分です。レアルの自陣は右側です。バックパスを受けたアトレティコのキーパーがロングボールを蹴りました。この画像では両SBのカルバハルとコエントランは同じくらいのラインに立っています。しかしカルバハルが下がっているのに対して、コエントランは明らかに突っ立っています。

次の画像で、その差が出ます。

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コエントランが遅れています。サボっています。本来ならコエントランは黄色丸辺りにいるはずです。

次の画像では、もっと差が開きます。

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中央でヴァランがマンジュキッチと競り合っています。ラモスがグリーズマンをマークしています。そしてカルバハルがカバーに入ろうとしています。この時のコエントランのポジションを見てください。

あっー!!

完全に一人だけ遅れています。左CBのラモスとのチェーンが切れていますね。この後ヴァランがボールを綺麗に弾き返せず、上空へ打ち上げてしまいました。

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今ボールは上空にあります。中央にポコッとスペースが出来ていますね。ここはコエントランがカバーに入らなきゃいけない。本来ならコエントランは黄色丸辺りにいるはずです。実際に右SBのカルバハルは、ちゃんと中に絞ってカバーしています。こうあるべきです。

この後グリーズマンがヘッドでマンジュキッチにボールを繋ぎます。上の画像を見ると分かりますが、まだボールが上空にあるのに、この段階でグリーズマンは飛んでます。正当な競り合いだとグリーズマンはラモスに勝てないので、タイミングで勝負を仕掛けてきました。これはグリーズマンが上手かったです。そしてボールを受けたマンジュキッチがシュートを撃って、レアルは失点しました。

下の画像はマンジュキッチがシュートを撃った瞬間です。

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サボったコエントランでしたが、結構ギリギリの所までマンジュキッチに迫ってます。途中で「ヤバい」と気付いたコエントランが全力で戻ったからです。結局、間に合いませんでしたけど。だからこれ最初からしっかりと戻っていれば、余裕で黄色丸辺りにはいたはずです。それなら少なくともシュートブロックには行けていたはずです。

この時も本来なら下の図のようになっていたはずです。

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こうです。CBが前に出たら、両SBは中に絞ってカバーリングをする。これならヴァランがマンジュキッチに振り切られても、最終ラインは3対2です。守備の原則の「+1」を確保できます。スペースも消しています。

また競り合う時は(体を寄せられない状態なら)無理に突っ込んだり無闇に飛んでは駄目です。もう絶対に間に合いません。そんな時は次の展開に備えて、しっかりと準備をする。

サッカーはチームスポーツなので、誰か一人のミスならカバーできます。しかし些細なミスでも、それが重なると失点に繋がります。チリ積もです。

コエントランのジェスチャー

この失点の後、一番デカいリアクションをしたのが、実はコエントランでした。

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なぜ中に絞らなかったのか。なぜ速度を緩めてしまったのか。ラモスがグリーズマンを潰せると思って油断していたのか。これは開始1分の局面ですから、体力の問題ではありません。気の弛みです。

アンチェロッティのジェスチャー

そして、この失点を目撃したイタリア人のアンチェロッティは、手をキュッキュッと内に動かすジェスチャーをしています。

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アンチェロッティ「詰めろ、詰めろ。コンパクトが基本や」

イエロ「……ありゃりゃ」

こういうことがあるからカバーリングは怠ってはいけない。

守備の基本

絶対にDFが競り勝てるとは限らない。またクリアしたボールが、どこに行くかは分からない。だから、飛んで来たら困る場所に「来る」と想定して、保険をかけておく。その為に守備のセオリーは存在します。失敗を犯した人達が、後世の人たちの為に「これを守らないとヤバイぞ」と言って残してくれたマニュアルが「基本」です。日々改善されていく「それ」に習って、しっかりとポジションを取ってスペースを埋めてカバーに入っておけば「まさか」の時に備えられる。

アトレティコがロングボール攻勢に出て来たんで、レアル最終ラインの問題が凄く分かりやすい形で浮き出た試合でした。

他にも沢山ありました。

もう!!

さようなら。